映画「シン・ゴジラ」

shin-godzilla

シン・ゴジラはスゴイぞ

と、のっけから例の戦車道アニメで流行したフレーズのもじりですが、実際スゴイんだから仕方ない。
観たらきっと何か書きたくなるけど、空気を読んだTwitter民が一致団結してネタバレ防止ムードを維持している手前、書くならばブログでもやるかー、と思ったのが本サイト開設理由のひとつ。

思い立ったはいいものの書き上がるのに一月近くかかってしまいましたが・・・ともあれ、まだまだ話題の尽きない「シン・ゴジラ」でございます。

以下、ネタバレ注意

 

 

 

災害描写がスゴイ
〜想定外を超える想定外〜

ゴジラFWの上映でゴジラの歴史が途切れたのが2004年。

その後、日本は東日本大震災をはじめとした未曾有の事態を体感してきたこともあり、今回の「シン・ゴジラ」前半の災害シミュレーションとも言える展開は非常に臨場感がありました。

もしも巨大怪獣が現実の日本に出現したら。

日本政府は、どのように対応するのか?

大震災や大津波を彷彿とさせるため共感や臨場感をもって臨むわけですが、災害が巨大怪獣に置き換わっているため、観客は自身の経験の一歩向こう側の、更なる未曾有の経験を見守る立場となる、と言えます。
要するに、「一歩間違えたらこの映像は現実になるのではないか」という説得力。
多くの人々が味わった感覚を”怪獣”という事象で拡張することで、作品世界への没入感を高める結果となったのは、実に見事。

登場人物がスゴイ(1)
〜テンプレートな人々〜

キャラクターは役職ごとの型通りの個性付けに留め、バックボーン的なものはできる限り排除している本作。
それが結果としてストーリーのスピーディーさにつながったとる結果になったと思えますし、役者陣の実力が映像にない人物背景を感じさせ、結果ひとりひとり十分すぎる個性を持ったキャラクターとなって表れていました。

また、第一の視聴者であるオタクの方々には ”バックボーンが乏しいキャラクターであっても、自身の妄想力で個性を深める能力” を持つ方が多数と思われますので、何の問題もないのでは(笑)。

フェイバリットなキャラを挙げだすとキリがないですが。

長谷川博己氏の演じる矢口蘭堂は「MOZU」や「デート」の奇演快演(?)を吹き飛ばすカッコよさ。
ヤシオリ作戦の演説は泣く、詳しくは後述。
10年後の総理就任の野望はご愛敬。

大杉漣氏の大河内総理は国民のことを第一に考える誠意はありながらも何処か頼りなく・・・。
次第に覚悟を決め事態に立ち向かう頼もしさへとシフトしていっただけに、例のシーンに巻き込まれたのは無念・・・。

米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンのSP マフィア梶田氏。
配役発表された時には何事かと思ったが納得、知らない人が見れば強面のアメリカ人ボディガードにしか見えない。
しかしオタクな人々には有名な彼、出る度に笑える。
ヒー イズ ゲームライター!! アンド トェウエンティエイト イヤーズ オールド!!
お偉方が真面目な話をしているのに、こちらの目は貴方に釘付けでしたぞチクショウ(笑)。

ゴジラがスゴイ(1)
〜誰だテメエ!!??〜

と、劇場の皆が思ったであろう衝撃の第二形態。
つぶらな瞳の憎めない彼(?)、俗称・蒲田君。蒲田君て
川を上るシーンでやけに横ゆすりの動きが多く違和感だったのですが、まさかこうなっていたとは。飛び散る体液に特徴的な移動、そして死んだ魚の瞳、一度見たら忘れられないあの姿。

自衛隊が民間人を巻き込むわけにはいかないという決断で攻撃は見送り、結果第三形態は取り逃すことに。
この判断、総理の主義の芯が垣間見え致し方ないものの、この時点ならある程度ダメージが通ったのかと思うと苦しいシーンである。

恐竜の生き残りが放射能によって変異したという初代やVSシリーズの印象が強いだけに、今回ゴジラのルーツが今までと大きく異なるというのは冒険ではあるのですが、巨大イグアナの彼奴でもゴジラ言うてたので、最早何が来ても問題ないのかもしれないと、今となっては考えたりする次第。

あと、どうやらこの第二形態ならびに第三形態は、封切りまもなく商品展開しておきながら、事前に情報が流れることはなかったとか・・・すごいな本気の財団Bの情報統制(笑)。

自衛隊がスゴイ
~適格に急所を狙うプロ根性に感服~

例のテーマが流れて鎌倉に上陸する第四形態。ここからが本番だと言わんばかり。

第二・第三形態が激しい動きが多く、質感なども相まって生物感が強かった一方で、第四形態の移動は静かで、まるで平行移動しているかのようなシーンが目立ちましたね。
それがかえって異物感や巨大感が引き立つことになっている。

さて、自衛隊の総攻撃「タバ作戦」。
戦車の旋回を写すカメラワークのあたりは、ガルパンで戦車に興味を持った人間は興奮せざるえないぞ。
一糸乱れぬ統制の取れた動きに、頭部や脚部を正確に狙い撃つ射撃など「凄いぞ日本の自衛隊!!」と興奮しきりなだけに、ちっともダメージの通ってないゴジラさんマジ不気味。

結果作戦は失敗に終わるわけですが・・・自衛隊の作戦本部の会議室だと思うんですけど、後ろに控えていた外国人(在日米軍?)が作戦失敗を確認してさっさと退席してるんですよね。

本国に報告 → 在日米軍にスクランブル出動指示 → ミサイルでゴジラにダメージ → 丸ノ内の例のシーン

という以降の顛末の引き金となったかと思うとすげえ複雑。

ゴジラがスゴイ(2)
〜徹底的な恐怖の象徴〜

みんなのトラウマ、首都圏大炎上である。
あれだけ固いゴジラの皮膚でも、米軍兵器は有効であった。
なんだかんだ頼りになるのは米軍かあ、などと思ったのも束の間、まさに逆鱗に触れたゴジラは更なる進化を果たすことに・・・。

さあ発動のプロセスと筆者の心情をプレイバックだ。

背中発光(ああ、このタイミングで放射熱線か)

黒色ガス噴出(あ?なんか泥っぽいのを吐いて・・・)

着火(うわ広範囲で燃えた!!)

収束(うわわわわわわ)

中断(わわわ・・・・・あ?)

背中から拡散(ぎゃあああああああ!!!???)

収束二射目で建造物ぶった切り(ああああああああ!!!!!!)

火炎放射(あ・・・あ・・・あ・・・)

活動停止(・・・・・・・・・・・・)

やりすぎ。

ゴジラの代名詞・放射熱戦。(本作では”放射流線”と呼称とか。)日本人誰でも知っているようなお馴染みの技が、よもやこんなにも絶望的な描写で描かれるとは。
GMK大怪獣総攻撃(2001)のキノコ雲出した放射熱戦も相当でしたけどね・・・恐怖のベクトルが違う。

手の付けられない、人智を超えた存在。畏怖すべき神という存在として、ゴジラが描かれた瞬間であった。
”空襲”や”原爆”の拡張であった初代ゴジラに感じた恐怖心を、現代の我々も極めてに近い形で味わうことができたのかもしれない。そんな風に思うのです。

登場人物がスゴイ(2)
〜昼行燈が日本を救う、かも〜

「まずは君が落ち着け」

本格的に合流した途端凄まじいインパクトを植え付けた松尾諭氏演じる泉修一。水を受け取り、「すまない」と謝る矢口もイイ。きちんと謝れる大人は素敵。

平泉正氏の、農林水産大臣から繰り上がってしまった里見総理も良い。大河内総理が英語でホットライン応対をしてたのに対し、頑張る気の無い日本語応対伸びるラーメン泉ちゃん呼び。頼りなさとやる気のなさ全開だが、実は切れ者というのが憎いキャラ。何より彼が頭を下げなければ日本は核攻撃を受けていたわけで。

巨災対はじめ多くの欠員が出ており、当然放射流線に巻き込まれた人が多数だとは思うのだが、個人的には気が狂って逃亡してる人間もいたのだろうな・・・と勝手に想像。あんなビーム目の当りにしたら正直気が狂う。

ゴジラの行動や自衛隊・米軍の作戦はどの程度まで報道に乗っていたのかは気になるところ。今回は”ゴジラを追うマスコミ”という危なっかしい役が排除されてたので。

ヤシオリ作戦がスゴイ
〜虚構に立ち向かう現実〜

世界中の研究所・製薬会社・鉄道各線・重機の提供企業など、自衛隊・米軍のみならず多くの人間への根回しとマンパワーで実現となった「ヤシオリ作戦」。
前線には協力企業の人間も多数参加しているわけで、そんな彼らに矢口が出撃前にかけた言葉が泣ける。

「日本の未来を、頼みます」

これまで日本を支えてきた働く大人が、未曽有の脅威に対する切り札となる。
物語中の伏線だけではなく、「現実の日本」という下地を、究極の虚構であるゴジラへの対抗策として描いたのは本当に素晴らしい。

ひとつが建造物
今回のゴジラの身長は118.5m。歴代より巨大化し、郊外での巨大間は十分ですが、駅周辺のタワーマンション群には埋もれる程度の大きさです。
特に丸ノ内の現実の(あるいは建設予定の)高層ビル群には紛れてしまう。
それを逆手に取ったビル破壊による攻撃と足止め。
特撮怪獣を見下ろすほどの巨大建造物が立ち並ぶ現代では、ビルは武器になった

ひとつが鉄道
これまで鉄道と言えば、怪獣に真っ先に襲われる都合のいい的でしかなかったと言っても、過言ではないでしょう。
本作も冒頭でこれでもかと派手に吹っ飛ぶ京急線。
そんな鉄道が爆弾搭載車両という前代未聞の対抗手段として登場するわけです。
それにしても”無人在来線爆弾”というインパクトありすぎる文字列よ。
災害に見舞われても異常なまでの速度で復旧する鉄道のゴジラへの反抗、鉄道の逆襲

そして薬品投与
薬品製造の迅速さについてもやはり、日本の技術ならきっと出来るのだろうな、と思うのですがどうなのでしょうね。(慣習や制度上の制約が大きすぎて難しいという見解が強いという記事もありましたが。)
ゴジラに致命的なダメージを与える武器がポンプ車だというのも衝撃。
冷静に見ると地味というか間抜けな絵なんですけどね(笑)。
ここに至る展開と、何より往年のBGMが強烈なので相反して熱いシーンになっている。

ヤシオリというネーミングはヤマタノオロチを鎮めるための酒の名に由来するとのことで。
単頭の竜を、多数のアマノハバキリ(重機)が鎮めるというシチュエーションにすり替わっているというのもちょっとニヤリポイントではないかと思うのです。

庵野秀明がスゴイ
〜俺よりスゴイものを(略)!!〜

例の「アオイホノオ2016」的な一連のやりとりが面白すぎたわけですが、それにしても今回改めて実感したのは庵野秀明という人はスゴイ人だ、ということでしたね。
もちろん『エヴァンゲリオン』などの作品で秀でたクリエイターであることは重々承知していたつもりでしたが。

封切りまでに公開された予告は、率直な言い方をすればチープなもので、「本当にゴジラ映画は甦れるのか」という心配が尽きませんでした。
また、自身の不勉強もあるのですが・・・庵野監督の特撮=『巨神兵東京に現る』だったわけで(あの作品は今となってはエヴァ破とエヴァQの空白を喩えた映像だったと認識していますが)、「ゴジラ、東京滅ぼして終わるのでは」「しまいにゃゴジラに羽根が生えるのでは」とドキドキが止まりませんでしたよ、ええ。

 

ということ、ここがスゴイぞ『シン・ゴジラ』8つのポイントでした。

公開以降、会う人会う人「あのシーンはああで」「あのシーンはこうだ」という話が尽きません。
映画としては長い2時間を、たったの2時間に感じられるほど、濃厚な作品を生み出してくれたことに、最大限の賛辞を。
日本の特撮に惹かれるものとして、『シン・ゴジラ』は文句なく秘蔵の一作となりました。他の作品にも、この映画が良い刺激となる事を願ってやみません。
そしてその気があるのであれば、ゴジラ次回作(もちろん『シン・エヴァンゲリオン』も!!)への着手を、じっくりと待ちたいと思う次第です。

尻尾とか、群体化して人型ゴジラ、通称「MINILLA」、とか。
あるいは”シン・キングギドラ”とか凄そうだ、この作風の延長ならマジで地球がヤバい

 

ところで、ここまでハードル上がった状態で他の監督やクリエイターにゴジラが引き継がれるのは、正直ハードル高いだろうなあ・・・と思ってたのですが。

まさかのアニメ化。

しかも脚本:虚淵玄。

虚淵さんは触れにくいところに切り込んでいく切り込み隊長か何かなのか。
無論、こちらも期待大ですとも。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です